茂木 源人 准教授

卒業論文テーマ

 

  日本の国土単位面積当たりエネルギー消費は1.8W/m2で、再生可能エネルギーの適地に限れば17W/m2となります。一方で、再生可能エネルギーの中で最も単位土地面積当たりのエネルギー生産量が多い太陽光発電を例にとると、日本における太陽光発電所の年間平均発電出力の想定は6W/m2程度なので、エネルギーの利用形態に合わせるためのエネルギー変換ロスを度外視しても、必要なエネルギーの1/3程度しか賄えないことがわかります。これに対して、サウジアラビアの日射量は日本の倍以上あるにもかかわらず,国土面積当たりエネルギー消費は0.15W/m2に過ぎません。また、その国土のかなりの部分が太陽光発電の適地で,日本よりも低緯度地域に位置し太陽光発電パネルの最適傾斜角が小さく、日本よりもパネルの設置密度を1.5倍程度に高められることを考えると、国内消費の100倍以上のエネルギー生産ポテンシャルがあり、エネルギー収支的には再生可能エネルギー由来の液体燃料の輸出も充分に可能です。

  エネルギーは多様です。特に次世代を担う再生可能エネルギーに関しては、化石燃料に比べると、まだやっとスタート地点に立ったばかりか、これからスタート地点に向かおうという段階のものがほとんどで、それぞれの分野の研究者の思い入れもあり、どれも非常に有望に見えます。しかし同時に、われわれが必要とする量は膨大で、これをまかなえるポテンシャルをもったエネルギー源は非常に限られているうえ、地域ごとに異なります。まず一歩引いて、個々の要素技術を俯瞰的に見ることが非常に重要です。当研究室では地域性や社会システムから将来の経済状況や資源の制約までを考慮し、持続可能なグローバルエネルギーシステムを実現するための社会システムデザインを行います。また、密接に関わっている「太陽光を機軸とした持続可能グローバルエネルギーシステム総括寄付講座」は、世界中から太陽エネルギーの商業利用に最も適した地域を抽出し、それぞれの地域の社会システムに最も調和的な持続可能エネルギーシステムの提案を行っています。

研究テーマ

社会戦略工学、エネルギー経済、リスクマネジメント

研究室の紹介

  土地(環境)、労働、資本、また、それらに加えて、水、資源、エネルギーを投入することにより、ヒトは食料を生産し、モノを作り、サービスを生み、経済を発展させてきました。農業の生産性にはいまだに地域によってかなりのばらつきがあります。生産性を飛躍的に高めた近代農業には肥料、農薬、エネルギーの投入が欠かせません。肥料、農薬の生産にもエネルギーを必要とするので、近代農法は大量のエネルギーがなければ成り立ちません。逆に言えば、さらなるエネルギーの投入により食料生産はまだ増やせる余地があるということです。もちろん水がなければ食料生産は不可能です。灌漑用水の過度の取水により各地で進む砂漠化の進行や、中国・黄河の変わり果てた姿を目の当たりにすると、水はかなり逼迫しているように思えます。地表水のフローはそもそも限られているし、乾燥地帯の農業が多くの場合依存している地下帯水層中の化石水は、過大な揚水を行えば枯渇性資源です。しかし最近では逆浸透膜の技術革新により海水淡水化の劇的なコスト削減が達成されています。海水の条件と電力事情さえよければ1tの真水を100円以下のコストで作ることができるといわれています。しかしそれでも真水生産1t当たり3~5kWhというエネルギーが必要です。植物工場などの完全に管理された環境では食料生産に必要な水の使用をかなり押さえることができますが、追加的なエネルギーの投入は必要不可欠です。

  このように考えると、土地と水は、ある程度はエネルギーによって代替できるといえそうです。また、マテリアル資源は、コストとエネルギーをかければある程度はリサイクルすることができます。つまり、環境を別にすれば、持続可能な発展のための最も決定的な制約条件はエネルギーだということが分かります。エネルギー資源の減耗や人為的な二酸化炭素排出による気候変動を考えると、化石燃料から持続可能なエネルギーシステムへの転換が必要不可欠です。持続可能なエネルギーシステムとは、太陽エネルギーがもたらす光,熱,風力,水力、バイオマスなどの各種自然エネルギーと、重力がもたらす潮汐のエネルギー、さらには地球内部の熱がもたらす地熱エネルギーのフローの範囲で、ヒトが必要とするすべてのエネルギーをまかなうことに他なりません。しかしながら、エネルギー関連のインフラには莫大な設備投資が必要な上、設備の償却期間も長いため、エネルギーの構造転換は急激には進みません。このため、将来のあるべき姿を見据えて、その実現に向けた適切な制度設計を含む戦略と地道な努力が必要です。

最大受入人数 3名
研究室ウェブサイト http://www.sselab.t.u-tokyo.ac.jp
実施場所 工学部2号館9階,工学部3号館2階
備考 室内作業が中心となりますが,希望により国内外におけるフィールド実験も可能です。
卒業論文テーマ
  • (1)サウジアラビアにおける産業構造変化を考慮した産業連関表における投入係数予測
  • (2)地域性を考慮した太陽光発電出力シミュレータの開発
  • (3)太陽光発電と蓄エネルギー型太陽熱発電のハイブリッド発電システムの最適化
  • (4)集光型太陽電池とバイオガス発電による自立型小規模電力システム
  • (5)藻類によるジェット燃料生産ポテンシャル評価
  • (6)太陽エネルギーによる海水淡水化の石油代替効果

ほか

卒業論文の狙い

グローバルな視点でローカライズした持続可能エネルギー供給システムを考えるきっかけとする。

卒業論文の内容/計画
  • 詳しい内容に関しては研究室に問い合わせて下さい。
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備考

特にありません。

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