井原 智彦 准教授

卒業論文テーマ

研究テーマ ライフサイクル的思考に基づいた環境問題対策の設計
研究室の紹介

 井原研究室は、今年で4年目を迎える研究室です。ライフサイクル的思考(life cycle thinking, LCT)に基づいて社会の環境問題を分析し、分析結果を用いて真に環境影響を低減できる対策を設計すべく、日夜研究を進めています。詳細は「研究テーマ」「研究室の紹介」をご覧ください。

 

※ライフサイクル的思考……物事を俯瞰的に捉える考え方のこと。ライフサイクルアセスメント(LCA)やライフサイクルコスティング(LCC)は、ライフサイクル的思考に基づいた手法です。

最大受入人数 3名
研究室ウェブサイト http://www.lct.k.u-tokyo.ac.jp
実施場所 (本郷キャンパス)工学部9号館309もしくは工学部4号館311
希望に応じて、柏キャンパス新領域環境棟461
備考

特になし。

卒業論文テーマ

1. 消費者行動の変化を考慮した新規技術のLCA

2. 2020年東京五輪の環境影響評価

3. 温暖化に伴う疲労の影響評価および適応策立案

4. 製品・サービスの社会影響評価(S-LCA)の手法開発

5. 携帯型測器を利用した温熱要素と人間健康の関係解析

6. アジアのメガシティーにおける気候変動に伴う健康被害の定量評価

 

以上のテーマを用意していますが、その他のテーマも相談に応じます。

 

卒業論文の狙い

今日、環境問題に限らず、社会のさまざまな問題は、目に付きやすいところではなく、目に付かない背後で大きな問題を抱えていることが少なくありません。卒論では、対象とする環境問題を構造化するとともに、計測・調査により実社会のデータを取得、環境影響を定量的に解析することで、社会にとって本当に望ましい対策を立案します。その過程を通じて、ライフサイクル的思考を身につけて欲しい、と考えています。

 

卒業論文の内容/計画

1. 消費者行動の変化を考慮した新規技術のLCA

【内容】

 今後の導入が期待される各種の新技術は、直接的に環境影響を変化させるだけではなく、消費者行動の変化を通じて、間接的にも環境影響を変化させると考えられます。たとえば、自動運転車は、走行の効率化によって、環境影響の削減が期待できますが、それだけではなく、消費者の時間の使い方を大きく変化させ、生活全般からの環境影響を大きく変化させると考えられます。

 卒論では、消費者行動を変化させるような新規技術を選定し、新規技術の直接的な環境影響を評価するとともに、消費者の生活時間変化を予測し、さまざまな生活時間に伴う環境影響も評価します。両者を合わせることによって、包括的な環境影響を評価します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • 新規技術の選定
  • 直接的な環境影響の評価
  • 生活時間統計や社会調査を用いた消費者の生活時間変化の予測
  • 包括的な環境影響の評価

 

2. 2020年東京五輪の環境影響評価

【内容】

 2020年東京オリンピック・パラリンピックは、環境五輪を謳っており、環境影響の低減を目指しています。

 卒論では、個別の競技施設について、複数のシナリオについて詳細なLCAを実施し、環境影響の小さい競技施設の設計について提案します。また、五輪全体の環境影響評価を実施、環境に優しい五輪とするには何が重要であるか考察します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • 競技施設に関するデータの把握
  • 競技施設のLCAおよび実効的な対策立案
  • 五輪に関するデータの把握
  • 五輪のLCAおよび重要な項目の特定へ

 

3. 温暖化に伴う疲労の影響評価および適応策立案

【内容】

 疲労は、都市気候が与える人間健康の中で、睡眠障害に次いで多く、熱中症など他の被害を上回ります。しかし、熱中症や睡眠障害とは異なり、発生するメカニズムが明らかになっておらず、そのため、有効な対策の設計にもつながっていません。

 卒論では、都市部での疫学調査の結果を解析し、都市気候と疲労の関係のみならず、睡眠障害との相互作用も考慮して評価することにより、疲労がどのような条件で発生するのかを突き止めます。そして、明らかになった都市気候と疲労・睡眠障害の定量的な関係より、疲労を軽減できる実効的な対策を提案します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • 疫学調査の手法および気候データの把握
  • 調査結果の解析、都市気候・疲労・睡眠障害の相互関係の整理
  • 疲労を軽減できる気温低減方策の探索、実効的な対策立案へ

 

4. 製品・サービスの社会影響評価(S-LCA)の手法開発

【内容】

 持続可能な社会を構築するためには、製品・サービスを始めとする社会のさまざまな要素の持続可能性を評価し、そして少しずつ持続可能に近づけるよう改善していく必要があります。持続可能性は、環境・経済・社会の3側面から構成されますが、しかし、社会面の影響評価手法は現在存在しません。

 卒論では、環境面で用いられているLCAのような影響評価手法を開発します。国連環境計画(UNEP)で、Social Life Cycle Assessment (S-LCA)のガイドラインを整備しています。UNEPのガイドラインなどをもとにS-LCAの枠組みを構築し、うち一部の側面に関して実装を目指します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • S-LCAの枠組みの開発
  • 実装する社会的側面の選択
  • 選択した社会的側面に関する調査
  • 開発したS-LCAでの一部の側面での実装と製品・サービスに関するケーススタディー
備考
  • 研究テーマの多くは、外部研究機関(大学、研究所、企業など)と連携して進めることもできます。 外部研究機関との研究ミーティングに参加すれば、指導教員以外の研究者から有意義な示唆を得られることでしょう。また同年代の学生から刺激を受けることもあるでしょう。是非、積極的に参加してください。
  • 質問があれば、ihara-t@k.u-tokyo.ac.jp までどうぞ。

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