坂田 一郎 教授

当研究室は、様々なビックデータを対象として、それらを構造化しつつ、課題解決等に役立つ有用な知見を引き出すための方法論（情報・ウエブ工学が中心）の研究を行っています。具体的な研究のテーマとしては、次の３点です。（１）学術論文や特許（イノベーション活動）の情報を用いた技術経営や政策形成に関する意思決定支援、（２）ウエブ上の情報を用いた解決すべき課題やチャンスの発見、（３）企業の属性や取引情報を用いた地域の産業構造やネットワークの形成要因の特定、レジリエントなサプライチェーンの設計など。多国籍の研究室環境の中で、市場・社会・ニーズに通じた企業や官庁とも共同しつつ以上のような研究を行うことを通して、技術経営をリードする人材の育成を目指しています。

・情報ウエブ工学と経済学等との融合を重視しています。
・森純一郎特任講師と共同研究室であり、密な研究交流を行っています。
・技術経営、政策形成の現場との連携を重視し企業や官庁と共同研究を実施。ミャンマー・ラオスの地方電化のための国際プロジェクトも実施中。
・取引ネットワークの研究は、2013年９月、ＮＨＫスペシャルで放送され、また、政府の地方創生本部の地域情報分析システムに採用された。

• テーマ(1) 大学発の有望な技術シーズの早期発見とその潜在的な適用可能先の探索
• テーマ(2) 地域の成長力を高めるサプライチェーン（取引ネットワーク）の設計論
• テーマ(3) ソーシャルメディア等におけるノベーションに関する情報流通の質量を測る指標の開発

各テーマ共通で、データサイエンス（数学、ネットワーク分析、予測、最適化等）の手法について、実践を通じて理解を深めるとともに、企業・官庁との交流を通じて、研究により解決すべき課題の把握の仕方を学ぶことを目的とする。また、与えられた枠組みの範囲内ではあるが、自らの関心に基づき関係者との交流や試行錯誤をすることを通じて、将来自身でプロジェクトを企画する基礎力を養う。

更に、各テーマに、対象とする事象（(1)は学術研究活動、(2)は企業の取引行動、(3)ソーシャルメディアのテキスト分析技法（(1)はリンク予測や類似度測定、(2)は機械学習、ネットワーク分析、(3)はテキスト分析や類似度測定等）へのより高いレベルでの理解を得る。

• テーマ(1)：現在、成長戦略上、重要な技術シーズが大学から生まれるようになっているが、わが国は大学の研究蓄積を有効に活用出来ているとはいえない。そこで学術論文及び特許に関する大規模データの中から将来有望な技術シーズを早期に発見するための方法（評価指標など）について研究するとともに、発見した技術シーズについて、その潜在的な適用先（用途）を発見するための手法を開拓する。
• テーマ(2)：研究室が保有する企業属性及び企業間取引の実ビックデータ（数万件規模）を用いて複数の地域における企業間ネットワークの構造分析、形成要因の特定等と比較を行う。そこから成長している地域のネットワークの特色、新事業展開を牽引している重要企業等の特定を行う。更に、結果をもとに成長力を高めるサプライチェーンの設計に寄与する評価指標の提案を行う。
• テーマ(3) 専門的なブログ・ニュースサイトは最先端のイノベーションに関する議論を喚起するのに重要である。世界のどこからでも閲覧が可能であるにも関わらず、各国で読まれている情報に違いがある可能性がある。そこで情報技術（IT）やクリーンテック（エネルギー・環境分野）を例にブログ等のコンテンツ分析・ネットワーク分析を行い、情報の流通に関する指標開発および評価を試みる。
  

研究室では幅広い種類データに対応した情報技術を扱っていることから、学習の進捗度や学生の関心によりテーマの調整は可能です。 プログラミング技能は必須ではありませんが、希望者には指導をしています。優れた卒論には、昨年同様、希望に応じ、学会発表の機会を提供します。