尾崎 雅彦 特任教授

卒業論文テーマ

研究テーマ エネルギー・環境問題解決のための海洋利用・開発システム
研究室の紹介

世界的なエネルギー・資源・食料・水の需要拡大や気候変動などの重要課題を解決するために、地球表面の2/3を占める海からの恩恵を享受する創意がこれまで以上に求められている。本研究室では以下のような海洋産業世界を描いて新しいシステムの提案や必要技術に関する研究取組を行っている。

  1. 海洋の利用・開発による資源・エネルギーの積極的な獲得、特に超大水深海域への進出
  2. CO2回収・海底下貯留(CCS)による化石エネルギー継続利用と環境負荷緩和の両立
  3. 海洋再生可能エネルギー適所活用による地域や離島の活性化
  4. 産学協力による海洋開発人材の増強
  5. 世界の海洋資源国・島嶼国との協力

標準受入人数 2名
研究室ウェブサイト http://aquacage3.k.u-tokyo.ac.jp/
実施場所 本郷キャンパス工学部3号館
備考

最近のトピックとしては、CCSの早期実現に向けて、回収源と貯留地のマッチングが不要で沿岸漁業などとのコンフリクトの少ない、船舶を用いたCO2輸送・海底下圧入システムを提案し、環境省プロジェクトに採用された。大規模実証実験に向けて企業と共同で技術開発に取組中。

卒業論文テーマ
  1. 海上オペレーション計画のための波浪発現時系列モデル作成手法
  2. 長期風速実測データにもとづく日本周辺海域のスコールの特性抽出
  3. カーボンフリー水素の国内生産・輸送システム
卒業論文の狙い

海上での諸作業や輸送が海象状況によって左右される海において、海象出現の不確実性をシステム計画に考慮する手法の構築と応用を行う。

卒業論文の内容/計画
  1. システムには、不稼動を挽回するために予備能力が必要である。海上輸送やオペレーションの計画においては、波浪が作業限界を超える確率(単純稼働率)だけでなく、連続静穏日数の確保や連続荒天日数の影響を考慮に入れることが必要な場合もある。

    最新の数値予報モデルと観測データの組合せにより数値的に再現された海象データが利用できる水準になってきている。地球上のほとんどの海域で、空間解像度0.75度、時間解像度6時間、1979年以降35年分の波浪データが提供されているので、この膨大なデータから、季節変動や空間的類似性を取り入れた波浪発現時系列をモデル化して(たとえばマルコフ過程近似)、モンテカルロ・シミュレーションなどに用いることをめざす。

  2. 海洋石油・ガス資源開発が本格化してきた西アフリカや東南アジアの沖合は、台風のような厳しい海象がなく施設の設計条件は比較的穏やかであるが、スコール(突発的な短時間の強風)への安全対策が要求されている。今後、様々な新しい資源(メタンハイドレート、深海底鉱物資源、洋上風力など)の開発が期待される日本周辺海域では、強度設計の関心事は台風による強風・大波や黒潮の強流であるが、比較的静穏な時を選んで行う海上オペレーションにおいてスコールへの備えも考慮すべきである。

    日本周辺の沖合海上で海象の連続観測が行われている例は希少である。そこで遠隔離島の観測所のデータ(数箇所×10年分以上)などから、スコールを同定・抽出する手法を構築し、風速変動パターンの類型化・安全性評価のための風速変動モデル化を行う。

  3. 温暖化対策として、製造時・使用時にCO2排出のないエネルギーが必要とされている。再生可能エネルギーは、需要に対する供給の不安定性や変動性を低減するために、貯蔵技術の商用化が不可欠であるが、大規模で経済的な蓄電技術の確立には時間を要する。水素は、石油精製時の副生物として製造されているものが流通している。また燃料電池自動車のための水素ステーションのオンサイトの水素製造方法としては、天然ガスの改質(CO2排出を伴う)が主流を占める。海外の安価な再生可能エネルギーなどで水素を製造し輸入するコンセプトが提案されているが、需要量がかなり多くならないと輸送コストなどで経済的に成立しづらい。

    水素エネルギーの市場規模が拡大するまでの期間、国内の再生可能エネルギーファームで余った電力で製造する水素や、石炭ガス化や天然ガス改質とCCS(CO2回収貯留)の組合せで製造する水素(いずれもカーボンフリーで電力の需給不平衡を緩和)を、消費地の都市へ輸送するシステムを統合的に立案する。再生可能エネルギーによる発電量は天候に依存し、あるいは沖合CCSの稼動も天候に依存することなどを考慮に入れて、ロバストな輸送システムのあり方を検討しシステムを計画してみる。

備考

希望があれば、船舶を用いたCO2輸送・海底下圧入システムや、大水深向け浮体係留、外洋での静穏水域造成、などのテーマも可能。

ページトップへ