井原 智彦 准教授


研究テーマ ライフサイクル思考に基づいた環境問題対策の設計
研究室の紹介

 井原研究室は、ライフサイクル思考(life cycle thinking, LCT)に基づいて環境問題を分析し、分析結果を用いて真に環境影響を低減できる対策を設計すべく、日夜研究を進めています。詳細は「研究内容」「研究室の活動」をご覧ください。

 

※ライフサイクル思考……物事を俯瞰的に捉える考え方のこと。ライフサイクルアセスメント(LCA)やライフサイクルコスティング(LCC)は、ライフサイクル思考に基づいた手法です。

研究室ウェブサイト http://www.lct.k.u-tokyo.ac.jp
実施場所 柏キャンパス・新領域環境棟461
希望に応じて、本郷キャンパス・工学部4号館311
備考

研究室ゼミは、毎週水曜日15:00から、柏キャンパスで開催します。交通費を支給する予定です。

卒業論文テーマ

1. 暑熱の人間健康への影響および適応策としてのエアコン導入効果の評価

2. 新たな人体温熱生理モデルを用いた周辺温熱環境と健康状態の関係解析

3. 消費者行動の変化を考慮した新規技術の環境影響の予測

4. 製品・サービスの社会影響評価(S-LCA)の手法開発

 

以上のテーマを用意していますが、その他のテーマも相談に応じます。

 

卒業論文の狙い

 今日の環境問題は、目に付きやすいところではなく、目に付かない背後で大きな問題を抱えていることが少なくありません。卒論では、対象とする環境問題を構造化した上で、計測・調査により実社会のデータを取得し、環境影響を定量的に解析することで、社会にとって本当に望ましい対策を立案します。

 

 この過程を通じて、ライフサイクル思考を身につけて欲しい、と考えています。

 

卒業論文の内容/計画

1. 暑熱の人間健康への影響および適応策としてのエアコン導入効果の評価

【内容】

 アジアのメガシティーでは、今後、地球温暖化やヒートアイランド現象によってさらに気温が上昇し、熱中症や睡眠障害、疲労などの健康被害が拡大すると予想されています。これに対して、適切にエアコンを導入すれば、温暖化を防ぎつつ被害増を抑えることができると考えられます。

 卒論では、メガシティーでの疫学調査の結果を解析することにより、どのような条件で健康被害が発生し、エアコンの導入効果が見られるか、突き止めます。その上で、健康被害を軽減できるエアコンの導入の仕組みを見出します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • 疫学調査の手法および気候データの把握
  • 調査結果の解析、気候や人間属性、エアコンの有無と健康被害の関係の整理
  • さまざまなエアコンの導入効果の評価および、実効的な対策立案へ

 

2. 新たな人体温熱生理モデルを用いた周辺温熱環境と健康状態の関係解析

【内容】

 温暖化の影響を評価すべく、気象庁が観測した気温と人間健康との関係が解析されてきています。しかし、実際に人間健康に影響を与えるのは、気象庁気温ではなく、人体の周辺の温度です。

 卒論では、国際的に用いられているが日本人には適用できていない人体温熱生理モデルを参考に、日本人に適用可能な人体温熱生理モデルを開発し、人体装着型測器で計測した温熱データや健康状態のデータを入力することによって、どのような条件が健康に影響を与えているのか突き止めます。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • 人体温熱生理モデルの開発
  • 生理モデルを用いた温熱データと健康データの解析
  • 人体周辺温熱環境と健康状態の関係解析、実効的な対策立案へ

 

3. 消費者行動の変化を考慮した新規技術の環境影響の予測

【内容】

 将来技術は、環境影響を直接的に変化させるだけではなく、行動の変化を通じて間接的にも変化させます。たとえば、自動運転車は、時間の使い方を大きく変化させ、生活からの環境影響を大きく変化させると予想されます。

 卒論では、機械学習などを用いて異種の統計を連結することにより、消費者の製品・サービス使用と生活時間を結びつけます。その上で、消費者行動を変化させるような新規技術を選定し、直接的な環境影響を評価するとともに、消費者の生活時間変化を予測し、それに伴う環境影響も評価することにより、新規技術が社会で引き起こす環境影響を予測します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • 機械学習などによる異種の統計の連結
  • 新規技術の選定、および直接的な環境影響の評価
  • 生活時間統計や社会調査を用いた消費者の生活時間変化の予測
  • 包括的な環境影響の評価

 

4. 製品・サービスの社会影響評価(S-LCA)の手法開発

【内容】

 持続可能な社会を構築するためには、社会のさまざまな要素の持続可能性を評価し、改善していく必要があります。持続可能性は、環境・経済・社会の3側面から構成されますが、社会面の影響評価手法は確立していません。

 卒論では、環境面でのLCAのような影響評価手法を開発します。国連環境計画(UNEP)は、Social Life Cycle Assessment (S-LCA)のガイドラインを整備しています。これらをもとにS-LCAの枠組みを構築し、うち一部の側面に関して実装を目指します。

 

【計画】

  • 既往研究のレビュー
  • S-LCAの枠組みの開発
  • 実装する社会的側面の選択
  • 選択した社会的側面に関する調査
  • 開発したS-LCAでの一部の側面での実装と製品・サービスに関するケーススタディー
備考
  • 研究テーマの多くは、外部研究機関(大学、研究所、企業など)と連携して進めることもできます。 外部研究機関との研究ミーティングに参加すれば、指導教員以外の研究者から有意義な示唆を得られることでしょう。また同年代の学生から刺激を受けることもあるでしょう。是非、積極的に参加してください。
  • 質問があれば、ihara-t@k.u-tokyo.ac.jp までどうぞ。

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