山口 一 教授


研究テーマ 北極・南極両極域の科学・工学:北極海航路の安全かつ効率的な商業利用のための総合的研究。南極海氷観測および「しらせ」航行データ解析の成果を生かして、両極のメカニズムの違いの解明と持続可能な北極利用の基礎技術に役立てる。
研究室の紹介

 世界の海洋の約1割は海氷に覆われます。海氷は気候の変動に敏感に反応し、その変化は地球全体の気候システム、さらには生態系へ大きな影響を及ぼすと考え られています。また、海氷に覆われる寒冷海域は未知の事柄が多い場所であり、既存の権利が入りこんでいない場所でもあります。

 北極海では温暖化増幅により、海氷が急激に減少しています。それはもちろん大きな環境問題ですが、一方では、北極海などの寒冷海域での海底資源の開発や海上輸送といった経済活動が、急速にすすめられるようになってきました。環境に 配慮した持続可能な開発を実現するため、さまざまな海洋情報を集約・整理・解析し、開発の道筋を示していくことは、急務な課題であるとともに大きなビジネスチャンスとも言えるでしょう。一方、南極の海氷は減っていません。この差はどこにあるのでしょう。地球科学として両極の比較対照研究をしなければなりません。一方、南極海氷研究や「しらせ」航行研究を、北極の持続可能な開発スキームに生かして行かねばなりません。

 私たちの研究室では、数値モデルと実地観測・衛星観測によって、海氷の数値予測手法の開発と寒冷域の海洋変動システムの解明のための研究を行っていま す。さらに、それらの成果をベースに、海洋情報の総合的管理・提供手法を考究していくことを目指しています。

研究室ウェブサイト http://www.1.k.u-tokyo.ac.jp/
実施場所 本郷では教育研究環境が整わないため、柏キャンパス基盤棟6H1室(山口研大学院生室)で実施する。講義の都合などで止むを得ず本郷で実施する場合は、3号館3階311室(新領域教員の学部生共用の部室)を使用する。本郷311室でも専用の机と柏の研究室のネットワークにつながったiMacを支給する。また、希望によりMacbook Airを貸与する。
備考

柏キャンパスへの交通費は、研究室より支給する。詳細は、教員(山口)に直接問い合わせること。メールアドレスは、

h-yama@edu.k.u-tokyo.ac.jp

卒業論文テーマ
  • 北極海の海上流出油ハザートマップの作成
  • 南極観測で収集した海氷および「しらせ」航行データの解析と、新しい北極研究船設計への貢献
  • その他テーマ
卒業論文の内容/計画
  • 北極海の海上流出油ハザートマップの作成
    北極海の利用を進めるにあたり、「安全」は決して忘れてはならない大きな課題である。その中の、油流出問題を扱う。
    海上流出油の移流・拡散の挙動は、海氷のある/なしで全く異なる。従って、その数値シミュレーションを行うには、精度良い海氷予測計算コードと、海氷の影響を考慮した流出油挙動計算コードの両方を持っている必要がある。山口研は、その両方を持っている世界でも唯一とも言える研究室である。それらを使って、海域、気象条件等を変えてひたすらシミュレーションと図示、結果の統計解析を行ってハザードマップの様なものを作成し、船舶航行や資源開発に注意すべき海域を特定できる様にする。この卒論では数値モデル開発には注力せず、研究室で開発済みの計算コードで沢山計算し、有用な結果を社会に示すことを目的とする。なお、この卒論は外国人の研究員と一緒に研究を進めるので、日本語英語入り混じったコミュニケーションになる。英語を聞いただけで逃げる様な人は、このテーマを選択するべきではない。
  • 南極観測で収集した海氷および「しらせ」航行データの解析と、新しい北極研究船設計への貢献
    山口研では毎年南極に物資輸送をしている「しらせ」の航行性能データを蓄積しているが、未解析もしくは十分解析されないままになっているデータも多い。これらを解析し、海氷状況と船型と船体挙動・性能の関係を明らかにし、「しらせ」の安全かつ効率的な運用に役立てるとともに、現在建造が検討されている新しい北極研究船の設計にも役立てる。
    データは研究室のデータサーバに保管されている。基本はExcelのマクロを書いて処理することになるが、氷況の画像解析など、人の手による解析が必要な部分もある。実験室の様に環境条件がコントロールされたデータでないため、統計学の手法を駆使した解析とデータの品質評価が必要となる。
  • その他テーマ
    学生からの要望があれば、上記以外のテーマも実施可能なので、事前にコンタクトして欲しい。
備考

 

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