今日、社会システムと産業は、双方向で影響を与え合いながら、進化を加速させている。例えば、新しい産学連携システムの整備は、産業のイノベーションをよりオープンなものとし、それが更に需要サイドから産学連携システムの発達を刺激している。現在、特に、社会システム変革の大きな波が到来している。例えば、「商法の現代化」、「国際会計基準」の変革導入、新たな科学技術システムの改革を盛り込んだ「第三次科学技術基本計画」の策定である。そうした動きの背景には、産業活動の中身やそれによって影響を受ける社会像の大きな変化がある。具体的には、知識経済化、働き方の多様化、環境意識の高まり等である。各種の社会システムは、産業を介して相互補完的な関係を形作っていることから、こうした大きな変革期においては、各種のシステム全般にわたる統合的な視野が重要となっている。 『科学技術・産業政策』とは、産業構造や企業行動の実態やそれへの影響を睨みながら、各種の社会システムの適否について検討を行い、新たなシステムを導入することや、古いシステムを改革することと定義出来る。こうしたシステムの改革などは、最終的には、社会全体の生産性(TFP)の向上を目的としている。本講義では、3つの視点から、『科学技術・産業政策』について議論する。第一は、企業税制、会社法制、企業会計という基幹的な社会システムと産業とのかかわりである。第二は、産学連携システムなど新産業の創成や産業の再構築を促すようなイノベーション・システム整備とその効果である。第三は、地域社会の構造変化や環境に対する意識の変化に応じた社会システムの整備と産業活動への影響である。 今日、技術革新の現場や技術経営(Technology Management)において、リーダーとして活躍する場合、仕事と社会システムとの関係を必ず考えることになる。『科学技術・産業政策』を議論する中で、社会システム各分野にわたる「俯瞰的な視野」を養ってもらうことが本講義の目的である。