我々の周りには、複雑な、しかし秩序だった様々な存在物にみちあふれている。自然物の複雑な全体をどのように理解すればいいか、それが近代科学の問いかけであったが,現在では、人間が操作対象とする人工物でさえ単純な挙動を示さないことも多くなり、設計や制御が容易でなくなってきている。さらに、経済主体の意思決定など、人間を含む社会システ ムであればなおさらである。個々の局所的行為は決定論的なのに全体の振る舞いは創発的である。このような複雑なシステムを取り扱う枠組みをマルチエージェントシステムと呼ぶ。まだ体系化されていない非常に新しい 分野であり、講義では基礎的事項について理解を進めるとともに、いくつかの研究トピックスの知見をうる。