システム創成学科Bコース「シミュレーション・数理社会デザイン」
2008年度(平成20年度) 講義シラバス
科目名
コンピュータモデルで社会を観る
担当教員
古田一雄 教授、橋本康弘 講師、木村浩 准教授、菅野太郎 准教授,陳昱 准教授
種目・単位数
総合科目 C. 社会・制度一般
時期・場所
1/2年夏学期 火曜5限(16:20-17:50)
駒場 5号館 511教室
講義の目的
 統計、数理、AIなどの原理に基いて人間集団や社会のモデルを構築し、コンピュータシミュレーションを用いて社会の動向をダイナミックに解析し、社会問題の解決や社会制度設計に役立てる手法の開発が進んでいる。本講義では、こうしたコンピュータモデルを活用した社会研究の代表的方法論の概要と、適用事例について紹介し、その可能性について考察する。
キーワード
社会シミュレーション,マルチエージェントシステム,ネットワーク,人工社会,仮想市場,コミュニケーション
内容
  1. 4/15(火) 数理による社会のモデル化(古田)
    導入として、社会機能を科学的にデザインすることの重要性について論じ、そのための有力な手段として数理モデルと計算機シミュレーションによる社会デザインのアプローチを紹介する。
  2. 4/22(火) 世論形成ダイナミクスと社会的決定(古田)
    大勢の人間の総意として決定を行うことは、日常的に見えるがなかなか難しい問題をはらんでいる。投票のパラドクスなどの例を示しながら社会的決定の問題点を解説するとともに、その解決の糸口、また、社会的決定の背景となる世論の動態について数理モデルにより解明された知見についても紹介する。
  3. 5/1(木) 複雑系としての社会システム(橋本)
    人が作り上げる社会システムは、適応的に変化を繰り返しながら因果と偶発性が混線する典型的な「複雑系」である。複雑系としての社会システムの理解のために、新しい思考のツールであるコンピュータを用いてチャレンジする上で必要となる基礎的な考え方について述べる。
  4. 5/13(火) ヒューマンネットワークからのコミュニティ分析(橋本)
    ソーシャルネットワーキングサービスや電子掲示板などのオンラインコミュニケーションにおける膨大なログデータを用いることで、コンピュータ上にヒューマンネットワークを再構築することが可能となった。そのネットワーク構造の背後に存在する隠れたコミュニティ構造を発見するための先進的な理論・技術について紹介する。
  5. 5/20(火) ゲームと人間行動(橋本)
    個人の意思決定はどのようになされるのか?多数の人間の意思決定の相互作用の帰趨はどのような結末へと向かうのか?ゲームの理論の基礎、人間の意思決定のモデルに関する最近の展開、およびコンピュータを用いた仮想実験について紹介する。
  6. 5/27(火) リスク認知と意思決定の統計モデル(木村)
    社会的意思決定に深くかかわるリスク認知について解説し、それをもとに、社会的意思決定がどのように行われるかを統計モデルをもとに紹介する。
  7. 6/3(火) リスクコミュニケーションの実現に向けて(木村)
    社会的意思決定がうまく実現するための手法のひとつとして、リスクコミュニケーションというものがある。これについて解説し、実際の取り組みを紹介する。
  8. 6/10(火) シナリオプランニングとシステムダイナミクス(木村)
    自分の意思を決定するとき、未来の行動を予測しながら動かなければ、適切な選択はできない。シナリオプランニングとシステムダイナミクスはそのような未来を予測する手法である。
  9. 6/17(火) ヒューマンモデルとシミュレーション(菅野)
    工学における人の役割はなにか、人を工学するために提案されてきたヒューマンモデル、認知実験、シミュレーションについて紹介する。
  10. 6/24(火) チーム協調とインタラクション(菅野)
    複数人(チーム)の協調における、人間の認知や振舞いの不思議と、人ー機械(エージェント)インタラクションにおける最新の研究を紹介する。
  11. 7/1(火) 危機対応と人の振舞い(菅野)
    大規模な人の相互作用の例として,危機対応を例に挙げ,組織連携や住民の振舞いのモデリング、シミュレーション等を紹介する。
  12. 7/8(火) コンピュータを用いた金融市場の統計解析(陳)
    コンピュータを用いた統計解析によって、価格のゆらぎに隠れた特徴事象(stylized facts)を明らかにし、金融市場における普遍的な構造と複雑ダイナミックスに対する理解を深める。
  13. 7/15(火) コンピュータモデルを用いた金融市場のシミュレーション(陳)
    マルチエージェントモデルによる金融市場のコンピュータシミュレーションを行い、価格変動やボラティリティなどに現れる統計的な特徴事象を再現する研究を紹介する。
成績評価の方法
出席とレポートにより行う。
備考
問い合わせ先:furuta @ q.t.u-tokyo.ac.jp