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システム創成学科 知能社会システムコースについて

コース長メッセージ

20世紀は、自然科学のあらゆる分野で飛躍的な発展が見られ、技術が多方面に展開した時代となりました。そして、これらの科学と技術の革新によって、人類の活動範囲は桁違いに拡大し、社会は姿を変え、そして、人類はかつてない大きな力を得ることとなりました。今後さらに、自動車の自動運転、ロボットによる生活支援、テーラーメイド医療など、夢の世界の実現がもう手の届くところまで来ています。また、同時に、価値の主体が物から技術や知恵へと移ったことで、 技術や知恵さえあれば、小さなベンチャーが大きな資金を得て、急成長をすることが出来るようになりました。大きいことがともかく有利に作用した資本集約の時代は過ぎ、小さいこと、地方にあることがそれほど不利にならない時代、すなわちだれもが活躍できる知識集約型社会の時代が到来しています。

一方で、現代社会を支える基本的な仕組みの限界も露わになってきています。地球環境の劣化、社会の分断、サイバーテロ、データの支配といった地球規模の課題はより顕在化し、また、世界情勢はより不安定感も増しています。より大きな力を得た人類がどのようにして、安定で平穏な社会を構築するのか、その道筋は明らかにはなっていません。多様な人々が尊重しあいながら協力して経済を駆動する新たな仕組みを生みだすことが求められる時代に入ったと考えられます。現状では、残念ながら、社会が自然とより良い方向へと向かう状況にはありません。様々な歪みや格差が解消され、だれもが活躍できるインクルーシブな社会へと移行できるのかどうか、それとも、格差社会、データ覇権主義、ポストツゥルースなどといわれる悪い方向へと進んでしまうのか、人類社会は今、分岐点に立たされています。

このような歴史的な局面において、東京大学は、より良い社会づくりにおいて中心的な役割を担う責務があると考え、国際連合が2015年にまとめた「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs:Sustainable Development Goals)」も参考とした「未来社会協創(Future Society Initiative)」の旗を掲げて組織的な取り組みを進めています。周囲を見渡すと、産業界や官界でも、歩調を同じくする動きが活発になっています。経団連の企業行動憲章の改訂、ESG (Environment, Social, Governance) 投資の普及がその代表的な例でしょう。より良い未来社会に貢献する東大発ベンチャーも次々と生まれています。今まさに、産学官が大きく変わりつつあるといえます。このような動きを進めるためには、科学技術、社会システム、経済メカニズムの3者のリンクが重要となります。

システム創成学科Cコース(PSI, Program for Social Innovation;知能社会システムコース)では、そうした社会の構造変化を先取りし、早くから、この科学技術、社会システム、経済メカニズムの三者のリンクを重視した教育を行ってきました。コースには、先の三つの要素に深い専門性を持ち、さらに分野横断的な研究のフロントランナーとして挑戦を続けている教員が揃っているのが特徴です。また、リンクの中から生み出された知恵を社会に実装するためには、多様な人々との協働が欠かせません。そのため、異分野連携などを通じて、異なるものを理解しようとし、異なるものに敬意を払うと同時に自己を相対化する、そうした意識や視野の獲得も支援してきました。

みなさんの先輩たちの中には、既に、より良い未来社会づくりの様々な場で、活躍している人たちがたくさんいます。これは五神総長の言葉ですが「変化の時代を楽しみ、自ら変化を作り出していく」、そうした挑戦者精神に溢れる学生さんをシステム創成学科Cコースは歓迎しています。


システム創成学科Cコース
コース長 坂田 一郎