東京大学

Systems Innovation,Faculty of Engineering,The University of Tokyo

 

システム創成学科とは

未来社会システム創成に向けた学理探求とグローバル人材育成

未来社会システム創成に向けた学理探求とグローバル人材育成

現在、我々の社会は変革が必要です。パンデミック・国際紛争・通信障害による重要インフラ *1(Critical Infrastructure)の維持が困難である課題および自然災害の激甚化や温暖化などに表出している地球環境における課題を解決する必要があります。人類の更なる幸福(Well-Being)と発展に貢献するDX *2により飛躍的に進化を遂げる先端工学技術は人間の暮らしを豊かに変化させるだけでなく、この難局を乗り越えさせてくれる可能性があります。先端技術が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変革し、リスクに強く社会経済活動の維持を可能とする「未来社会システムの創成」が期待されています。
(*1 重要インフラ(Critical Infrastructure)とは、物理的か仮想的かを問わず、国全体にとって極めて重要であり、機能不全または破壊が、安全保障、経済保障、公衆衛生、またはそれらの組み合わせの維持にネガティブな影響を与えるシステムおよび資産を意味します)
(*2 DXとは、IT(情報技術)・デジタル化の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変革する(デジタルトランスフォーメーション)の概念です)

経済社会活動を継続し増強する重要インフラをDX関連技術を利活用して堅牢化・強靱化するための様々な学術が注目されています。様々な社会課題を解決するための、資源・エネルギー開発、物流最適化、マテリアル開発、宇宙・海洋開発、情報通信・情報科学の利活用などは、重要インフラを支え、複雑化しつつある未来社会システムの創成に欠かせない学術領域です。しかしながら、そのような学術を総合的に扱う教育研究組織はほとんどありません。また、学術面での国際協力の持続と、若手・学生の国際活動環境の維持が課題となっています。また、グローバルな合意事項として、GX *3なきDXは有り得ないことも挙げられます。性能だけを追求し、地球環境を顧みないデジタル技術の研究開発は、既に国際社会では通用しない時代となりました。
(*3 GX(グリーントランスフォーメーション)とは、 2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取り組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革を意味します)

システム創成学科は、人々の生活および社会経済活動の基盤となる重要インフラを堅牢化・強靱化し、人類の更なる発展と幸福を追求する「未来社会システムを創成」するための総合的な学理を探求します。AI・データ連携・量子・情報通信・カーボンニュートラル・フロンティア資源・宇宙利用技術・次世代マテリアル・海洋開発・サプライチェーン最適化・新エネルギー開発・社会科学・技術経営・複雑系設計知などを含み、地球環境に配慮する文理融合・学際の総合知を追求するという理念を定めています。
まさに、システム創成学科の名は体を表しているのです。

未来社会システムの創成のための重要インフラの堅牢化のためには、1つの専門知では対応が困難であり、専門知を中心とした上で、多様な学理を総合的に扱う「総合知のアプローチ」も同時に必要となります。つまり、基軸となる高度な工学的専門知に加えて、技術の社会受容性を確認するための高度な倫理、適切に技術を適用するための法整備や公共政策、技術を社会実装し経済を発展させるための技術経営など、広範囲な学理を身につける必要があります。そこで身につけた総合知は、国内外で社会貢献をしたり、大学院に進学しさらに専門知を極め、未来社会システムを創成する活動に携わるために有益な素養となるでしょう。
また、システム創成学科では、国際人材循環のための様々な取り組みを実施しています。我が国と海外との研究者や学生の移動や頭脳循環を拡大し、安全・安心未来社会システムに関する学際的で国際的に卓越した新たな学理形成の加速とグローバルな視野と経験を持った人材の育成に取り組んでいます。

東京大学では、人類社会が直面する地球規模の課題に関し、あらゆる分野の叡智を結集してその解決に取り組むこと、そして、学知に基づいてさまざまな価値を創出する産学協創活動をより一層強化し、その持続的発展を確実なものとすることを目標として掲げています。特に、後者では、人工知能、量子技術、次世代半導体技術、次世代サイバーインフラなどの先端研究領域における産学官民共同研究のゲートウェイとしての機能を強化するとともに、人文・社会科学の観点も含めた大きなビジョンの共有に基づく包括的連携及び国際的なイノベーション創出を推進することを目的としています。これは、システム創成学科が目指す方向性と完全に一致します。

21世紀型の「知」の構築と統合化を⽬指して

現在、システム創成学科には、「Aコース(E&E) 環境・エネルギーシステム」「Bコース(SDM)システムデザイン&マネジメント」「Cコース(PSI) 知能社会システム」の3つのコースが設けられています。

システム創成学科では、DXによる課題解決を加速するために、柔軟性と迅速性を研究教育に取り入れています。工学部全体で取り組む、メタバース工学部のリスキリング講座では、DXに関わる科目を開設しています。

また、システム創成学科には、「環境・エネルギーシステム」「システムデザイン&マネジメント」「知能社会システム」の3コースがあり、専門的な知見、あるいは、学際的な取り組みにより、前述の学理を追求していますが、これらのコースに跨がって、社会が要請する学理を習得するためのバーチャルコース・カリキュラムの仕組みもあります。市民目線で地域創生を進める地域未来社会連携研究機構や、グローバル連携でDXを進める次世代サイバーインフラ連携研究機構など、東京大学全体で進める部局横断型組織も学科教員が中心となり進めています。
また、システム創成学科は、社会に直接大きく貢献する「新しい産学官連携の工学研究教育」を実施しています。
特に、AI、アントレプレナーシップ、次世代サイバーインフラなどを始めとする社会と特につながりの深いデジタル革命学理を新しい方法で教育する寄付講座や社会連携講座を複数開設しており企業からの信頼を集めています。企業共同研究多数、また、大型の産学連携国家プロジェクトを複数同時並行で遂行するなど、また、新たな産業のインキュベーションの観点では、既に、学科から生まれた東大発ベンチャー起業は15社以上であり、教員のみならず学生主導の起業も多くあるなど、東京大学の中でも前衛的な工学教育を実践していると言えるでしょう。

システム創成学科は、以上のような基本理念に沿って、安全・安心に暮らせる「未来社会システム創成」のための学理を探求し国際的に活躍するグローバル人材を育成します。

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